Chapter21

マラウイの現実

マラウイ:2009年1月29日~2月20日 S$1=MWK160

AFRICAN JAG PROJECT4月1日~4月30日まで東京・新宿2丁目にあるCoCoLo Cafeで 『アフリカの風』 というタイトルの展覧会を行ないます。ナイジェリア・オショボ派のアーティストをはじめ、西アフリカの布や立像、マスクに加え、ここ数年私が撮影したマラウイの子供達の写真も展示します。平日(月~金)は夕方5時~、週末は3時からオープンするお店で朝まで営業しています。お時間のある方は、是非遊びに来てください。
詳しくは、http://www.africanjag.org  もしくは03-5366-9899 (CoCoLo Cafe)まで。
さて、今年最初の『アフリカの風』。サボっていたわけではないのですが、いつの間にか桜が満開の季節になってしまいました。随分、間隔が空いてしまって本当にスミマセン。と、いうのも2009年1月29日~3月6日までの約5週間、African JAG Projectの現地支援 及び現地視察の為、マラウイ共和国と南アフリカに行っていて、帰ってきたら寒さと、花粉と黄砂で体調を崩してしまい、頭脳も停止状態になってしまったわけです。 やっと復調しつつ、・・・今回は、支援地、マラウイ共和国の現状をお伝えします。この時期、南半球に位置しているマラウイは季節的には夏/雨季にあたる。私達が支援をしているマラウイ湖畔の村は、連日30℃を越え、紫外線もかなり強い。ここの雨季は、日本の梅雨とは違い、短時間にバケツの水をひっくり返したような豪雨=スコール。そのため、ジメジメした感覚はなく、結構、快適に過ごせる。日中も木陰に入れば、かなり涼しく、心地良い風が吹く。 マラウイ湖では強い日差しの中、連日、子供達が元気一杯に水遊びを楽しんでいた。

蔓延する病気

AFRICAN JAG PROJECTの時期、マラウイではマラリアやコレラ等の伝染病が蔓延し始める。アフリカの病気に慣れていない私達は、決して気を許す事は出来ない。手洗いやうがいは勿論、マラリアの予防薬も欠かす事は出来ない。
特に私の場合、一度ナイジェリアで“熱帯熱マラリア”という、最悪のマラリアに侵され、死にそうになっているから、ついつい神経質になってしまう。折りたたみ式のクーラーボックスを利用した薬箱には、現地支援で必要になるかもしれない医薬品に加え、持病の薬、湿布、胃腸薬、熱さまシート、マラリアの予防薬、治療薬、検査キット等々が、ぎっしり詰め込まれている。私達が滞在していた期間は、流行が始まったばかりだったが、2月末~3月末は、主食のメイズが収穫を終え、剥かれた皮とメイズの芯にマラリアの原虫ハマダラ蚊が卵を産み、それが孵る為に大勢の人がハマダラ蚊に刺され、マラリアの熱に苦しむ。最近では、薬局でマラリアの検査キットも購入出来るようになったのだが、現地の人達がそれを購入する事は滅多にない。
また、マラリアにかかっても予防薬を飲んでいれば、症状は軽くなるし、かかってしまっても治療薬を飲めば大抵の場合、命を落とすこともないのだが、貧困層の人たちは予防薬、治療薬を購入するお金を持ってはいない。そのため、体力のない子供やお年寄りが毎年多くの命を落としている。
コレラの流行も始まった。コレラに関しては、不衛生な環境が一番の原因と思われるが、私達が支援を始めた2006年以降も都市部を除いては、環境衛生が改善されたとは思えない。現在、マラウイでは都市部を除いてゴミ収集というものがない。その為、田舎などでは、ビニール袋などの不燃ゴミが増えたことによって土に戻らないゴミが散乱してそこに雨水が溜まったり、汚水と一緒になったりして悪臭を放つなど、これまで以上に深刻な問題になってきた。特にこの時期(雨季)は、マラウイ湖から水揚げされる小魚が、ドライフィッシュになる前に腐ってしまい、それを又湖に捨てる=水が汚れる・・・という、より一層劣悪な環境を作り出すため、湖畔に位置する貧困層の村では、コレラや赤痢が発生する確率が高くなる。勿論、下水道などもなくトイレは基本的に穴を掘ってそこにする。汚物が一杯になると又次の穴を掘るわけだが、汚水は、地下に浸透し、村人が安全だと思っているポンプ式井戸から汲まれた水だって決して安全とは言えない。

医療体制

AFRICAN JAG PROJECT以前にもレポートしたが、マラウイは圧倒的に病院の数が少ない。国立の病院が約60。海外のNGO等が経営する病院が約30。国の中に病院の数が100に足りていない。 また、病院だけでなく、医師の数や看護師の数も圧倒的に少ない。 2006年に国が管理する病院を視察したが、病棟1棟60人の入院患者に対して看護師1人が担当するという、考えられない環境だった。そのため、家族などが付き添い、患者の面倒を見られなければ入院は出来ないと言っていた。
医師に関しては、給与の額が低いという理由から、皆、欧米に行ってしまうため、隣国から数年契約で医師を派遣してもらっていた。最近は、少し医師の給与額などが改善されてきたということだが、それでも患者の数に対して医師、看護師は絶対数少ない。また、マラウイにおいて問題だと思うのは、薬局がリロングウェ(首都)とブランタイア(第2の首都)にしかないことで、その他のエリアの人達は、病院に行かなくては薬を手にすることが出来ない。例えば、この時期発生するマラリアも薬さえ飲めれば、かなりの確立で死に至る事は無いのだが、病院まで行くお金が無い為に死に至るケースが多くなっている。近くに病院が無くても薬局さえあればマラリアの薬は手に入る=助かる命が沢山あるということだ。
病院を作るのは、建設費だけでなく、医師や看護師などの人員確保も大変だが、薬局であれば、そう無理なことでは無い様に思う。何か方法は無いのだろうか・・・。
私たちの国では、チョットした病気や怪我であれば近所の薬局で薬を買って栄養のあるものを食べて睡眠をとれば、たいてい治ってしまう。それが当たり前でもある。しかし、マラウイでは私たちにとって当たり前のことが、決して当たり前のことではない。病院に行きたくてもたった50円が無い為に消えていく命。それが、貧困層の現実だ。

食糧事情

AFRICAN JAG PROJECTこの時期は、前年度に収穫した主食のメイズが底をつく時期でもあり、食料が高騰する。その為、貧困層の人たちにとっては、一番辛い時期となる。 最近では、品薄、価格の高騰を防ぐ為に政府が農民からメイズを一括買い上げし、アドマックという一定の貯蔵庫で販売するというシステムをとっているのだが、実際には、地方のアドマックにはメイズが無い・・というのが現実だ。 結局、政府の購入価格が安いということでブラック・マーケットに売る人も多く、政府の管理するメイズがなくなる頃にブラック・マーケットに流れたメイズが一斉に小売店に高値で並ぶことになる。どちらにしても、ただでも苦しい生活を送っているのに主食の高騰でより一層、食うに食わずの生活を強いられるのは貧困層の人たちで、この状況は早期解決を求められる。
また、今回視察をしてみたところ、私たちが支援をしているエリアにおいては、メイズの成長が著しく悪い。既に穂がついているにもかかわらず、メイズは痩せてほとんど実をつけていない。これから、雨が降ればもっと大きく育つのかもしれないが、もし、このままだとこのエリアに関しては大変な不作で食糧不足になる事は間違いない。ただ、マラウイの場合、少しエリアが違っただけでも農作物の育ち方が違うので、他のエリアが豊作である事を祈りたい。

教育

AFRICAN JAG PROJECT教育事情は、お世辞にも決して良いとは言えない。特にいわゆる政府が運営する学校は、多くの問題を抱えている。 ここでいう学校とは、政府系のプライマリー・スクール(小学校/8年制)のことだが、私たちが支援しているエリアの大半の子供達は、教科書を持っていない。そればかりかノートや鉛筆さえ持っていない子も大勢いる。子供達は、皆学校へ行きたいと言うが、彼らのノートを見る限り、何を勉強してきているのかが判らない。特に低学年の子供達は、朝の6時半に学校に行き、10時には帰宅する。正味3時間の勉強。その間ノートは1ページも埋まっていない。そのため、2年生や3年生の子でもABCすら書けない子供が沢山いる。高学年になっても大半の子が九九算をまともに出来ないし、足し算でさえも桁が多くなると難しくなる。
そんな状況の中で大統領が好んだと言われている制服着用。プライベート・スクール(私立)ならまだしも政府系の学校も制服着用が義務付けられ、制服を着用していないと授業が受けられないという。貧しい家庭の子にとって制服着用は不可能に近い。普段から、ボロボロの服を着てまともな食事も食べられていない子供が、何故オーダーメイドの制服を着用しなくてはならないのだろう?どんなに勉強が好きで学校に行きたくても制服を持っていない為に受け入れてもらえないというのは、どう考えてもおかしい。子供達に必要なものは、制服ではなく教科書やノート、鉛筆なのではないだろうか。ある村の校長は「ウチは、受け入れることにしている。」と言っていたが、それをしなければ田舎の貧しい村の子供達は、ほぼ全員、学校に行かれなくなってしまう。一日も早くくだらない、この制服義務付けという制度を辞め、貧しい子供達でも元気に学校に通える日が来て欲しいと心から思う。 教育は、子供達に未来を与える。難しい勉強を押し付けるのではなく、必要最低限の勉強でも構わない。英語と加減乗除がきちんと出来るだけでも可能性は広がる。教育をちゃんとすることがマラウイの明るい未来を切り開くのだと思う。マラウイという国は、本当に人が優しい。貧しいけれど人々が助け合って生きている。彼らの笑顔がいつまでも続くように自分に何が出来るのか、もう一度考えてみたい。
Afican JAG / Producer 浅野典子

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