Chapter20
アフリカの魅力-南アフリカの音楽
アフリカの魅力-南アフリカの音楽
1991年、アパルトヘイト撤廃宣言が出され、1994年ネルソン マンデラ氏が、黒人初の大統領に就任。その後、欧米から様々な音楽が一気に南アフリカへ入ってきたことで南アフリカの音楽事情はかなりの変化をみせた。特に最近は、テレビの普及率が急速に高まり、テレビ番組を通して広まった音楽がヒット・チャートを賑わしている。そのため、プロモーション・ビデオの制作が精力的に行なわれるようになり、特に若者受けする音楽は、先進国同様、TV番組でいかに取り上げられるかが鍵になってきている。
《HIP HOP》ここ数年、HIP HOPが大流行していて、音楽番組でかけられるPVの多くは、HIP HOPものだったりする。ソゥエト出身の「ZOLA」や「Proverb」というアーティストが大ブレイクしたことをきっかけに、それに続けとばかりに、多くの若者がマイクを持つようになってきた。自分たちの置かれている状況を世界中の人に伝えようと本物のメッセージを発する一方で、売れる為の手段としてHIP HOPという手法を用いるアーティス トも増えてきたように思う。それでもまだMCは、不器用だけど一生懸命言葉を選び、伝えるということを意識しているだけ健全といえば健全。
それに比べて、トラックメーカーに関しては、欧米の影響を受けすぎて、横ならびのようにまったくオリジナリティーを持たないDJが多く、あまりいただけない。しかもそれが数年前に先進国で流行ったものだったりと、何となく古臭い。確かに先進国のDJ志望の子供で も使わないような機材で頑張っているのだが、もっと 自分達が普段触れてきた音楽、リズム、グルーブを取 り込んだ、彼ら自身のオリジナル・ビートを作り出し て欲しいと思ってしまう。 まぁ、それでも「音楽でのし上がってやろう」という気迫は感じるし、近い将来、凄いアーティストが出てくる予感はするけど・・・。 HIP HOPでのお勧めは、ケープタウンのゲットーに住むCrosby(クロスビー)。彼は、独自のスタイルで実生活の中から湧き出る言葉でメッセージを発信している。来年リリースされる『African JAG vol.2』にも一曲参加してくれているので、必ずチェックして欲しい。
《JAZZ》南アフリカはJAZZの発祥の地とも言われ、毎年3月にケープタウンで大きなJAZZフェスティバルが開催され、世界中からそのフェスティバル目当てで数多くの観桜客が訪れる。最近は、南アフリカのJAZZも欧米の影響を受けて、妙にお洒落になってきたけれど、それでもまだまだ独特のグルーブを奏でるアーティストは大勢いる。特に60代、70代のおじいちゃん達の演奏は渋く、聴き惚れるほど。しかし、年々、彼らの演奏場所が無くなって来ているという現実が悲しい・・・・・。
《レゲエ&ラガマフィン》レゲエやラガマフィンも根強い人気がある。ケープタウンのゲットーの中にラスタのコミュニティーがあって、彼らもまた、日々音作りに励んでいる。ラガマフィンのMCの中には、外国人を自宅に招待してゲットーの食事を食べてもらい、ゲットーの生活の話しをし、ゲットーをなくす為の活動に理解を求める・・という試みをしているアーティストもいる。又、ラスタを尊敬している人は、大勢いる。どこの地に行っても本物のラスタのハートを持った奴はリスペクトされてる。・・・ただ、最近はカッコだけのラスタも多くみられる。
《ハウス・ミュージック》次にハウス・ミュージック。この流れはかなりの勢いをみせている。ちょっとスカを織り交ぜたような独特のリズムを持っていて面白い。アフリカ系のハウスという感じで断然オリジナリティーを感じる。おそらく、本来彼らの中にある独特のグルーブ感がどんどん進化系の音を作っていくんだと思う。
《その他》南アフリカにおいては、私が知るかぎり女性ボーカリストのレベルがすばらしく高い。 私の一番のお勧めは、Busi Mhlongo(ブシ マホロンゴ)。ズールー語で歌う彼女の歌は、言葉が判らなくても心の奥にまでその声とともに響きわたる。以前、彼女のLIVEを観たことがあるが、何故か涙が止まらなかった。“魂”を感じたんだと思う。 アパルトヘイトのときに国を出て、家族と離れ離れになり、国外では民族の言葉“ズールー語”を封印して英語で歌っていたのだそうだ。25年ぶりに母国に戻る時、彼女は「私は自分の言葉で歌を歌いたい。私は、自分の民族に誇りを持っている。」と話してくれた。南アフリカのアーティストの多くは、彼女のことを心からリスペクトしている。現在、乳癌の手術をして療養中とのこと。一日も早くステージに復帰して欲しいと切に願っています。そのほか注目すべき若い女性アーティストは、Zamajobe。彼女は既にヨーロッパでも人気が高くさまざまな賞を受賞している。Busiのようなアフリカ・ミュージックではないが彼女の声はとても心地良い。
《LIVE盤》LIVE盤も1作品紹介したい。けっこう良かったのが、「1night at MOYO live」というアルバム。南アフリカの色々なアーティストが収録されていて、音色やグルーヴ感は、まさに今の感覚と伝統のリズムが見事にに融合されていて、とても心地良い内容に仕上がっている。まさに必聴といえる。
《ストリートLIVE》ストリ-トLIVEに関しては、以前にも書いたけれど、もの凄いパワーを感じる。ここ最近、先進国で感じなかった熱気と本気が入り混じった、これぞ本物のストリートだ。決して安全とは言えないのでここに場所などは記さないけれど、どうしても行ってみたい人は、自己責任のもと、自分で調べて行ってみるといい。かなりの興奮を体で覚えると思います。今回は、あまり知られていない南アフリカの音楽事情についてお話ししました。音楽以外にも まだまだ、南アフリカについて語りたいことはたくさんありますが、それはまた次の機会に!!プロデューサー/浅野典子
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